天地明察 by 冲方 丁(うぶかた とう)
[UP:2010.05.17]
『天地明察』は、今年の本屋大賞受賞作。
本屋大賞は今まで私が知らなかった作家の本などに目を向けるいい機会なので、注目しているんだけど、今年は特に歴史小説とあって、期待大。
いそいそと本屋へ向かった・・・ら。
当たり前のことですが、ハードカバーのみで、初めて読む作家だったので、1800円にビビってしまった。
申し訳ないけど、図書館へ行って予約してあったんです。(人気作品なので金沢の図書館は避けてかほく市の図書館を利用)。それが先日、ようやく届いたのでした。
・出版:角川書店
・初版:2009年12月
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■ストーリー
江戸、四代将軍家綱の代。
お城の碁打ち四家の一人、安井算哲(=渋川晴海)は、大の算術好き。
ある日、算術の問題が奉納されている神社を見に行ったところ、一瞥即解で答える天才を発見。ますます算術にはまる晴海。
そんな晴海のもとに、改暦の仕事が舞い込んでくる。
なんども挫折を繰り返しながら、さまざまな人の思いを背負い込んで、改暦という一大事に立ち向かう晴海。それは人生をかけた仕事だった。
最初、数ページを読んだところで、もう、一気に引き込まれてしまった。
ひょうひょうとした晴海のどこか憎めないおとぼけぶり、テキパキした「えん」の応答、算術塾での熱い雰囲気。
そして、物語の随所に出てくる「からん、ころん」という絵馬の音。
この音ってとっても効果的で、使い方がとても新鮮だった。
登場人物のセリフや所作は、他の歴史小説にはあまり見られないような現代風の感覚なのだが、それも違和感が感じられず、むしろ、ストーリーの小気味よいテンポになっている。著者が若いせいもあるのかな。若さがいい意味で存分に出ている。新しい歴史小説を読めた嬉しさが残った。
タイトルになっている『明察』とは、算術問題で正解だったときに書かれる「大変よくできました」という意味から取られており、つまり、天と地がぴったり一致しました、という意味なのだ。
単なる改暦のことだけでなく、この明察という言葉はこの小説の中でずいぶん奥深い。
その意味でも、とってもいいタイトルです。
途中、「ううーむ、ここはもうちょっと深く描ききってほしい」という部分もあるんだけど、それがないから物語のスピード感が出て読みやすいのかもしれない。
描ききってほしかった第一は、改暦の重要性。
暦を作る、あるいは暦を制定する、ということの大切さって、なんだか現代ではピンと来ない部分があるよね。
「暦が違っている」っていう意味すら、ピンと来ないかも。
違うとどうしてダメなのか、正確な暦にしたら、どう良くなるのか、その辺が手薄だったような・・・
言葉で描くのはすごい難しいとは思うんだけど。
算術や碁、暦など、重々しく難しい素材を扱いながら、作風が全体的に明るめなのは、ひとえに作者の筆致のうまさだろう。
えんと晴海のやりとりも実に面白く、すがすがしいし。
北極出地のときの、建部さんと伊藤さんとのやりとりも、カワイイっ!ってレベルだし。
和算で有名な関孝和の話は日本史の授業で習っていたけど、日本の算術のレベルがこんなに高かったとは!!
開国していたら、関孝和の名も世界に広まったかもしれないなー。
ところで、晴海は碁打ちでもある。
本書には碁の話もよく出てくるんですが、『ヒカルの碁』を全巻揃えて愛読している私は、碁の部分もとっても面白かった。
ヒカ碁ファンの方はよーく存じていると思いますが、例の「初手天元」もでてきますぞ。
特に、最後、碁の考え方である「残心」が改暦成功の切り口になっていたのにも快哉。
うぶかたさん、算術やら碁やら暦やら神道やら、どんだけ知識があるんだ!!と感心してしまいました。
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明治大学卒業後、27歳でヒロテックを起業。パソコン畑一筋。
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