リアル by 井上雄彦
[UP:2008.11.05]
以前、このブログでも紹介した『スラムダンク』の著者、井上雄彦氏が手がける、車イスバスケのお話し。
『週刊ヤングジャンプ』で不定期連載のため年に1巻しか出ないのがとても残念だが、それを補って余りある渾身の内容である。つい最近、8巻が発売されたので、それを機会にご紹介しておきますね。
・集英社
・週刊ヤングジャンプ不定期連載
・600円+税
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最近の漫画は人気作家になればなるほど、多作を求められ、その分、質が落ちているようなものも見受けられる。その点、妥協がない井上氏らしい。読者側も「いいものをじっくりと・・・」と思っていくべきであろう。
さて、ストーリーのほうはというと、「車イスバスケ」の話、とサラリと書いたはいいが、本当かな? 「車イスバスケ」は色づけであって、本当に描きたいのは・・・・
8巻目ではあるが、私のような凡人には井上氏が書きたい本当のテーマがまだ見えてこない、という感じなのである。
主人公は誰?というのもまた、難しい問い。
中学時代、短距離の全国トップでありながら、骨肉種で車イスとなり、バスケを始める戸川 清春。
バスケ大好きながら、バイク事故を起こして女の子を下半身不随にさせ、自分の道を見失う野宮 朋美。
プライドが高く、「自分はAランクの人間」と思っていたのに、下半身不随になってもがく高橋 久信。
それらを取り巻く、いろんな立場、いろんな人々。
高橋久信を描くことで、読者は障害というものをバーチャル体験することになる。
他の障害者たちは、物語に登場するときから車イスなのだが、彼だけが私たちの目の前で障害者となっていく。1巻で交通事故に会い、紆余曲折を経て、8巻目でようやくリハビリへの意欲を感じ始める。この遅々としたスピードがいかにもリアルだし、彼の気持ちの動きなんか本当によくわかる。
そして、野宮くん。彼もまた、迷える子羊なのだ。
最初は単なるヤンキーかと思っていたが、最近、名言をバンバン言うようになって・・・。
8巻の名セリフ
「今日は負けたが、道はつづいている きっとどこかにつながっている」
野宮くんが言うところに感動があるんだな、この言葉。でも彼自身の道はまだ見えてこない。
リアルというタイトルをどのような意味で井上氏がつけたのか、うかがい知るすべはないが、人物たちの感情の動きはまさにリアル。
誰も彼も、迷い、悩み、考え抜く。
そこにはお手軽な結論は持ち込まれない。
そこがまさに井上氏の真骨頂と言えようか。
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明治大学卒業後、27歳でヒロテックを起業。パソコン畑一筋。
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